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形見分けをしたら相続放棄はできない? ~法定単純承認~

形見分けをしたら相続放棄できないことがある


相続放棄とは、初めから相続人ではなかったものとみなされる制度であり、借金などのマイナスの相続財産が、プラスの相続財産を上回るときによく選択される制度です。

しかしながら、「法定単純承認事由」に該当していたら、自動的に単純承認と扱われて、相続放棄を選択することができなくなります。問題は「いかなる行為が法定単純承認事由なのか」です。
ここでは「形見分け」が法定単純承認事由にあたるかどうかについて説明します。

形見分けは、目的物が「一般経済価額」があるかどうかに注目


そもそも形見分けとは、故人の親族などに故人の財産を贈与する行為であり、「法定単純承認事由」を定めている民法第921条の行為(処分)に該当するように思えます。

これについては、多くの裁判例によって判断がなされています。ここでは裁判例を中心にして解説していきます。

「一般経済価額」があるかどうか
昔の最高裁にあたる大審院では、次のように述べられたことがありました。

被相続人の衣類でも、一般経済価額を有するものを他人に贈与したときは、民法第921条(旧民法第1024条)1号に該当する。(大判昭和3年7月3日新聞2881号6頁)


昔の事例では、「一般経済価額があるかどうか」が基準として登場しました。
ある程度の経済的な価値があるものを形見分けした場合は、法定単純承認事由に該当し、相続放棄ができなくなるということです。

「一般経済価額があるかどうか」を基準にしているのは、上記の事例だけではありません。過去の裁判所の事例を紐解くと、同様の見解を示した事例は他にもあります。

既に交換価値を失う程度に着古したボロの上着とズボンを元使用人に与えても、一般的経済価値があるものの処分ではなく、民法第921条1号に該当しない。(東京高決昭和37年7月19日東高民時報13巻7号117頁)


上記は「一般経済価額」という表現ではないものの、言わんとすることは同じです。
経済的に価値のないものを形見分けしたとしても、法定単純承認事由には該当しないということです。

形見分けを受領する行為は法定単純承認事由?
形見分けで故人の財産を他人に与えるとしても、その財産が「一般経済価額」のないものであれば、法定単純承認事由に該当しないことはお分かりいただけたでしょうか。では、形見分けを受領する行為は法定単純承認事由に該当するのでしょうか? 検討してみましょう。

多額の遺産のなかの一部を形見として受領した行為が、法定単純承認事由に該当しないとした事例がありました。

不動産、商品、衣類等が相当多額にあった訴外Aの相続財産の内より、僅かに形見の趣旨で背広上下、冬オーバー、スプリングコートと訴外Aの位牌を別けて貰って持ちり~中略~、これが民法第921条1号の処分にあたると考えることはできない。(山口地徳山支判昭和40年5月13被家月18巻6号167頁)


分からないのなら専門家に相談
結局のところ、形見分けが法定単純承認事由に該当するかどうかは、各場面の状況によって変わります。
上記で紹介した事例によると「一般経済価額があるかどうか」が一つの基準になっていることが分かりますが、何をもって「一般経済価額がある」と判断するかは明確ではありません。
したがって、少しでも判断に迷うなら専門家に相談するのがよいでしょう。