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相続法の歴史

相続制度はこのように変わった


現在の民法では、相続法は民法の「第五編」に規定されています。

この現代の相続法は何も昔からこのような内容であったわけではなく、
時代が変わるにつれて改正を重ねてきました。ここでは、そんな「相続法の歴史」をご紹介します。

明治民法(旧民法)時代(M31.7.16~S22.5.2)


現代の相続法の前身とも言えるのが明治民法(旧民法)です。旧民法は、明治31年法律第9号として公布され、明治31年7月16日に施行されました。明治31年とは、西暦だと1898年の頃のことです。


今はなき「家制度」
旧民法は、家の統率者である「戸主」に広範な権限を与える「家制度」を採用していました。財産関係についても、あくまで家のものは戸主の個人所有という形を採用していました。

一方で、戸主以外の者(これを「家族」といいます)にも個人的な財産所有を認めていました。旧民法は、「家族」が自己の名において得た財産はその者の特有財産とする旨を定めていたため、家族が固有の財産権を有することができたのです(旧民法748条1項)。

旧民法で「遺産の承継」といえば、2種類に分けることができます。「家督相続」と「遺産相続」です。

家督相続
→家督相続とは、戸主権の承継と戸主の財産権の承継のこと
→嫡出長男子の単独相続が原則であった

遺産相続
→遺産相続とは、家族の財産権の承継のこと
→均分相続が基本(均分相続とは、相続人に等しく分け与えることです)

たった数ヶ月だけの「応急措置法」の時代(S22.53~S22.12.31)


時代は移り変わり、日本は大戦において敗戦、そして「日本国憲法」が昭和21年11月3日に公布、昭和22年5月3日から施行される運びとなりました。

日本国憲法は帝国憲法とは異なり、「個人の尊厳」と「両性の本質的平等」がうたわれるようになりました。当然ですが民法も、憲法の精神を受けて改正がされることになり、それらの考え方が取り入れられることになります。つまり「家制度・戸主・家督相続」という制度が、それらの概念に馴染まないため、ここで相続法の抜本的改正が必要になったのです。

しかしながら、民法の規定をすぐに変えることはできず、内容を固めるのにどうしても時間が必要です。

そこで新しい民法の内容を固めるまでの間であっても、旧民法の家督相続等の考え方を否定するため、「応急措置法」が制定され、昭和22年5月3日から施行されることになりました。「応急措置法」は、正式には「日本国憲法の施行に伴う民法の応急的措置に関する法律」といいます。

応急措置法は新しい相続法ができるまでの「つなぎ」の法律ですが、内容は以下の通りです。

「家」制度の規定は今後適用しないことにする
家督相続の規定も今後は適用しないことにする
遺産の承継については「遺産相続」に一本化する
相続順位、相続分に関して一定の修正を加える(注)

(注)相続人を配偶者相続人と血族相続人に分け、血族相続人に順位をつけたのはこのときです。

現行民法の時代(S23.1.1~)


その後昭和22年法律第222号により、旧民法第4編及び第5編の全面的な改正が行われました。結果、昭和23年1月1日から施行されたのが「現行民法」です。

この民法の特徴は、応急措置法の規定を多く取り入れたところにあり、現代では馴染みのある、以下の事柄が相続法として確立しました。

家督相続を廃止し、遺産相続に一本化(今後は単に「相続」と呼ばれる)
配偶者相続人の相続権の確立
諸子均分相続制の確立
祭祀財産を相続財産から切り離す祭祀財産制の確立


昭和37年の相続法改正
現行民法も、昭和23年当時からそのままということはなく、時代の変化を取り入れて、改正に改正を重ねました。昭和37年に、現行民法は大きく改正されました。改正項目は以下の通りです。

同時死亡の推定規定を設けた(民法32条の2)
代襲原因の明確化(相続開始以前の死亡など)(民法887条2項)
血族相続人の第一順位を「直系卑属」ではなく「子」に改めた(民法887条)
孫以下の直系卑属は常に代襲相続人になることが明確にされた(民法887条)
相続放棄者は初めから相続人ではないとされた(民法939条)
特別縁故者制度が新設された(民法958条の3)


昭和55年の相続法改正
昭和55年においても、現行民法は大きく改正されました。主な改正項目は次の通りです。

兄弟姉妹を被代襲者とする代襲相続人を甥姪に限定(民法889条2項)
配偶者相続人の相続分の引き上げ(1/2、2/3、3/4)(民法900条)
遺産分割の際に考慮すべき基準の明確化(民法906条)
寄与分制度を新設(民法904条の2)
遺留分の割合の変更(民法1028条)


その後の改正
その後も現行民法は改正を重ねています。

平成16年法律第147号において、民法それ自体が現代語化のための全面改正がさなれました。このとき相続分野においても、見出しをつける等の改正がなされています。