相続人のなかに胎児がいる場合の相続登記の実務
相続人のなかに胎児がいる場合、相続登記はどのような取扱いになるのでしょうか。
まず、条文上相続において胎児は「既に生まれたものとみなす」とされているのですから、
胎児名義の相続登記は可能です。
相続登記をしたら、胎児の名義は「亡甲妻乙胎児」になります(明治31年10月19日民刑1406民刑局長回答)。たとえば胎児に「太郎」や「花子」といった固有の名前を既につけていたとしても、相続登記の名義は「亡甲妻乙胎児」になります。
遺産分割に基づく相続登記は?
胎児名義で相続登記ができることはできますが、遺産分割協議に基づく相続登記も可能なのでしょうか。
登記実務においては、胎児が出生する前の遺産分割の可否について
消極的に解しています(昭和29年6月15日民甲1188回答)。つまり、遺産分割協議に基づく相続登記はできないのです。登記実務は、上記C説(かそれに近い説)を採用しているのです。
このように扱われる理由としては、いくつかあります。まずは胎児は一人に限らず、双子や三つ子の場合もあります。元気に生まれてくるばかりでなく死産の場合もあります。結局、具体的な相続分を出生前に確定することが難しいのです。
相続人に胎児がいる場合に可能な相続登記
結局のところ胎児が相続人になった場合に申請できる相続登記は次の2パターンです。
法定相続に従った相続登記
指定された相続分に従った相続登記(遺言に基づいた相続登記)
なお、胎児を相続人とする相続登記においては、「懐胎を証する書面」の提出は不要であるとされています(質疑応答・登研191号72頁)。