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相続債務と相続分の指定

相続分の指定とは


遺言で、たとえば「長男には3分の2、二男には3分の1を相続させる」として相続させる割合を決めることを「相続分の指定」といいます。
相続分の指定について詳しく知りたい方は、下記をご覧ください。

相続分の指定(口頭による「遺言」は有効?)

相続債務の取扱


では、「長男には3分の2、二男には3分の1を相続させる」としてした遺言書が作成された場合、相続債務の取扱はどのようになるのでしょうか。長男と二男で法定相続分は2分の1ずつですが、相続債務は法定相続分に従って相続されるのでしょうか? それとも、指定された相続分(つまり長男3分の2、二男3分の1)に従うのでしょうか?

民法の規定によると、相続人はその相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する旨が規定されています(民法第899条)。「義務」、つまり相続債務についても相続分に従うのです。

そしてここでいう「相続分」には、法定相続分だけでなく、指定された相続分も含まれると一般的に解されています。
相続分が指定された場合は、相続債務についても、その指定に従って相続されるのです。

相続債権者との関係


では、相続債権者との関係では、「相続分の指定」はどのような影響を与えるのでしょうか。上記の例の指定がなされた場合、相続債権者は長男には3分の2、二男には3分の1の割合で債権を行使しなければいけないのでしょうか?

つまりは、「相続債権者は自己が関与していない相続分の指定に拘束されるのか?」という問題です。
これについて判例は次のように述べています。

相続人のうちの1人に対して財産全部を相続させる旨の遺言により相続分の全部が当該相続人に指定された場合,遺言の趣旨等から相続債務については当該相続人にすべてを相続させる意思のないことが明らかであるなど の特段の事情のない限り,当該相続人に相続債務もすべて相続させる旨の意思が表 示されたものと解すべきであり,これにより,相続人間においては,当該相続人が指定相続分の割合に応じて相続債務をすべて承継することになると解するのが相当である。

もっとも,上記遺言による相続債務についての相続分の指定は,相続債務の債権者(相続債権者)の関与なくされたものであるから,相続債権者に対してはその効力が及ばないものと解するのが相当であり,各相続人は相続債権者から法定相続分に従った相続債務の履行を求められたときには,これに応じなければならず,指定相続分に応じて相続債務を承継したことを主張することはできないが,相続債権者の方から相続債務についての相続分の指定の効力を承認し,各相続人に対し,指定相続分に応じた相続債務の履行を請求することは妨げられないというべきである(最判平成21年3月24日)。


上記の判例についてまとめると次の通りです。

指定された相続分に従って債務を相続
民法の規定によると相続人は権利義務を相続分に従って相続するとされているところ、その相続分には、「指定された相続分」も含まれると解するとされています。義務(相続債務)についても、指定相続分によって相続されるのです。

相続分の指定はあくまで相続人間での効力
相続分の指定は、あくまで被相続人(又は被相続人から委託された第三者)がしたことであり、相続関係者は関与していません。
したがって相続分の指定に相続債権者は拘束されないことになります。

相続債権者の「対応」は二通り
相続債権者側の対応としては二通り考えられます。

一つ目は、相続人に対して、法定相続分に従って請求することです。
上記の例でいうと、長男に2分の1、二男にも2分の1の請求をするのです。相続債権者は相続分の指定には拘束されないからできることです。

二つ目は、指定された相続分に従って請求することです。
上記の例でいうと長男に3分の2、二男には3分の1を請求することになります。
相続債権者の側で、指定された相続分を承認することも可能なのです。